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​寄稿

第64回日本先天代謝異常学会学術集会に参加して国立国際医療研究センター研究所 岡村 匡史

 2023年10月5日〜7日(土)に、大阪国際会議場で開催された第64回日本先天代謝異常学会学術集会で、 “シスチノーシス(シスチン蓄積症)に伴う角膜混濁から角膜びらんに至った1症例”というタイトルでポスター発表してきました。飲み薬(ニシスタゴン)だけでは角膜の結晶をなくすことはできず、点眼薬により結晶を減らせることを、山本先生に発表していただきました。健斗君もポスターの前に来てくれたので、他の先生からいろいろ質問されていました。希少疾患は患者数が少ないので、患者さんから直接話を聞けたのは、小児科の先生にとっても貴重な経験だったんじゃないかと思います。健斗君、ありがとう!「最近、家を出るときにあまりまぶしくなくなってきた」と言ってくれたのが本当にうれしかったです。
 今回特に印象的だった講演は、国立天文台 渡部潤一先生の「第二の地球はとてつもない数で存在する〜宇宙生命発見への期待〜」でした。星は元素の合成工場なので、星が誕生する際に、生命の源となるアミノ酸やDNA、水はどの星でも存在すること、地球のように恒星から適度な距離にあり暑くも寒くもない星は、宇宙空間に少なくとも40億個存在し、そこには生命がいる可能性が高いことなどを発表されていました。星が誕生し消滅するまで時間と比較すると、我々の人生はほんの一瞬なので、壮大な宇宙の話しを聞きながら、我々が今できることは何なのかを考えるいい機会でした。
 また、特別講演2で呼ばれていた喜多俊文先生(大阪大学大学院医学研究科)と話しをすることができ、ライソゾームから不要物を排出しているエクソソームに注目した新しいシスチノーシスの治療法開発について、意見交換をさせていただきました。シスチノーシスはライソゾームにシスチンが蓄積する病気なので、細胞がもっているエクソソームという機構をうまく利用して、蓄積したシスチンを細胞外に排泄できるかもしれません。まだ、妄想レベルですが、うまく行けばニシスタゴンを飲まなくても、あるいは量を減らしても全身のシスチン量を減らせる可能性があり、まずは実験動物を用いて検証していきたいと考えています。
 日本先天代謝異常学会は、患者とその家族、医療従事者、基礎研究者が一堂にあつまりますので、普段困っていること、これからどのようにして欲しいのか、などを直接伝えることができる貴重な場です。今回、前田さんは自費での参加でしたが、継続的に啓蒙活動ができるよう、患者会の組織も少しずつ変えていくのがいいかなと思いました。
 今回の学会は、新しい治療法のアイデアをもらい、大変実りの多い学会でした。来年の日本先
天代謝異常学会学術集会は、東京で開催されますので、ぜひ一緒に参加しましょう。

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